書評:分かりやすく伝えることが学べる一冊

      2019/01/14    - , 能政夕介のススメ


タイトル:具体と抽象 世界が変わって見える知性の仕組
作者:細谷功
ページ数:133ページ
目安読破時間:2時間(2019年1月6日読了:3冊目)

もくじ

序章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉: 人間の頭はどこがすごいのか
第2章 デフォルメ: すぐれた物まねや似顔絵とは
第3章 精神世界と物理世界: 言葉には二つずつ意味がある
第4章 法則とパターン認識: 一を聞いて十を知る
第5章 関係性と構造: 図解の目的は何か
第6章 往復運動: たとえ話の成否は何で決まるか
第7章 相対的: 「おにぎり」は具体か抽象か
第8章 本質: 議論がかみ合わないのはなぜか
第9章 自由度: 「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観: 「上流」と「下流」は世界が違う
第11章 量と質: 「分厚い資料」か「一枚の絵」か
第12章 二者択一と二項対立: そういうことを言ってるんじゃない?
第13章 ベクトル: 哲学、理念、コンセプトの役割とは
第14章 アナロジー: 「パクリ」と「アイデア」の違い
第15章 階層: かいつまんで話せるのはなぜか
第16章 バイアス: 「本末転倒」が起こるメカニズム
第17章 理想と現実: 実行に必要なのは何か
第18章 マジックミラー: 「下」からは「上」は見えない
第19章 一方通行: 一度手にしたら放せない
第20章 共通と相違: 抽象化を妨げるものは何か
終章 抽象化だけでは生きにくい

序章を読むだけで無意識にうなずく

具体=分かりやすい

抽象=分かりにくい

一般的に認知されているこれらの概念の印象です。

本書の目的はこの、「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」ことです。

序章で著者の細谷功氏は力強く宣言しています。実際に僕自身も具体が分かりやすく、抽象度が高いことに対しては「もっと具体的に教えて」と投げかけていました。

だからこそ、これから何が語られるかが非常にワクワクしたのです。個人的に特に印象深く感じた章は以下です。

第9章 自由度: 「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観: 「上流」と「下流」は世界が違う
第13章 ベクトル: 哲学、理念、コンセプトの役割とは
第17章 理想と現実: 実行に必要なのは何か
第19章 一方通行: 一度手にしたら放せない

章のタイトルを見て素直に「面白そう!」「興味ある!」と感じたら手に取ってみても良いかもしれません。

各章を読んで感じた点は「抽象」と「具体」それぞれへの理解です。
本書が冒頭で「抽象」について“「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え”と述べています。

だからといって同様に「具体性であることの悪」が語られていることは一切ありません。

そもそも、「具体的」であることの価値。そして「抽象的」であることの価値が述べられていおり、本来持つべき役割が異なるのです。

「具体的」な特徴としては・・・
・短期的
・すぐに行動可能
・解釈の自由度が小さい
・適用範囲が狭い
・結果の是非判断が容易にできる
・感情に訴える

 

一方で「抽象的」の特徴としては・・・
・長期的
・行動への翻訳が必要
・解釈の自由度が大きい
・適用範囲が広い
・結果の是非判断が難しい
・感情に訴えない

として本書内でも取り上げられています。(第17章 理想と現実: 実行に必要なのは何か より)

 

みなさんもイメージができるかもしれません。

具体的なので、何をすべきがはっきりしておりすぐに取り掛かることができます。
解釈の自由度が小さいのは、「間違いが起こりにくい」「標準化されている」と捉えることもできます。

しかしながら、これらは時として行動が作業的になるリスクや、自分自身で考える余地をなくしやらされ感を生んでしまう可能性が出て来ます。

 

一方の抽象的な特徴としては、「なぜその行動をするのか?」という部分が一言では語られていないため確認や翻訳が必要になります。
また、解釈の自由度が大きいため、様々な発見や革新が生まれる可能性があると同時に「混乱」が生まれる可能性も十分にあり得ます。

なので、具体⇔抽象の思考の往復が重要なのです。

ビジョンを描く中で、その中身が決して完璧に具体化されたものではないでしょう。
もし仮にそれが完璧に具体化されたことであれば、それはビジョンというよりはすでに設計された「やるべきこと」に当たります。

抽象的な言葉だけでは人の心を動かすことができません。
同時に、具体的な言葉だけでも人の心を動かすことができないと思います。

それぞれの特徴を理解し、抽象化と具体化を繰り返していくこと。
そうすることで、想像力は膨らみ、目の前のコトに意味を見出すことができ、そしてその最短を走れる努力ができるようになると思います。

場面に応じて、今何を求められているか?考え方の幅を広げるための役に立つ1冊だと思います。皆さんも是非手にとってみてください。

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Kotokake 代表 能政夕介

立命館大学産業社会学部卒。大学時代、RBC(立命館大学放送局)にてアナウンサーとして在籍。
ラジオDJやステージの司会を行う中で「人に伝える」ための方法やコンテンツ作りの楽しさを知る。
立命館大学卒業後は楽天(株)に就職し、インターネットを通じたマーケティングやコンテンツ開発から、楽天市場に出店する店舗様の売上を上げるコンサルタントを経験。その後独立をする。

現在はフリーアナウンサーとしてDAZNやスカパー、インターネット放送等でスポーツ実況も担当している。
その他にも結婚式、イベントの司会や企業・高校・大学等へコミュニケーションの講師としても活動中。
「話すことが楽しい!」と思える人を増やすために、学生から主婦まで幅広くオンラインや直接指導等を行っている。

【過去の出演歴】
DAZNにてJリーグ中継(J1/J2/J3)、スカパーにて天皇杯やユースの試合等も担当。
その他にもBリーグ、なでしこリーグやアメリカンフットボール、ラグビー、ホッケー、高校野球の実況等の担当経験もあり。


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